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企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表について
Posted At 2024年10月7日 @ 9:05 AM In 企業会計 | Comments Disabled
企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」)は、2024年9月13日に企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(以下、合わせて「新リース基準」を公表しました。
我が国においては、2007年3月にASBJが企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」(以下、合わせて「旧リース基準」) を公表し、リースに関する我が国の会計基準は当時の国際的な会計基準と整合的なものとなりました。
しかしながら、2016年1月に国際会計基準審議会(IASB)より国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」(以下、「IFRS第16号」)が公表され、同年2月に米国財務会計基準審議会(FASB)より FASB Accounting Standards Codification(FASBによる会計基準のコード化体系)のTopic 842「リース」(以下、「Topic 842」)が公表されたことにより、IFRS第16号及び Topic 842では、借手の会計処理に関して、主に費用配分の方法が異なるものの、原資産の引渡しによりリースの借手に支配が移転した使用権部分に係る資産(使用権資産)と当該移転に伴う負債(リース負債)を計上する使用権モデルにより、オペレーティング・リースも含むすべてのリースについて資産及び負債を計上することとされたため、我が国の会計基準とは、特に負債の認識において違いが生じることとなり、国際的な比較において議論となる可能性がありました。
これらの状況を踏まえ、ASBJは、財務諸表作成者及び財務諸表利用者から幅広く意見を聴取した上で、借手のすべてのリースについて資産及び負債を計上する会計基準の開発に着手することとし、公開草案の公表及びコメント募集を経て、この度の新リース基準の公表に至ったものです。
また新リース基準の公表にあたり、関連する会計基準等の改正として、ASBJおよび日本公認会計士協会から多数の改正が公表されています。詳細は、参考資料をご確認ください。
新リース基準は、旧リース基準を置き換える新たな会計基準等として公表されました。
そのため、新リース基準の適用により、以下の企業会計基準、企業会計基準適用指針、実務対応報告及び移管指針の適用は終了となります。
新リース基準は、リースに関する会計処理及び開示に適用します。
ただし、以下の場合を除きます。
また、上記にかかわらず、無形固定資産のリースについては、リース会計基準等を適用しないことができるとされています。
借手の会計処理について、新リース基準では、従来のリース基準におけるファイナンス・リース、オペレーティング・リースの区分はなくなり、IFRS第16号の定めと同様に、借手はすべてのリース取引について「使用権資産」および「リース負債」を計上します。
新リース基準では、借手のリース期間について、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、以下の(1)及び(2)の両方を加えて決定すると定義されています。
(1) 借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間
(2) 借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間
このため、新リース基準の適用により従来のリース基準よりもリース期間が長くなる場合が考えられます。
新リース会計基準においても旧リース基準と同様に、短期リース及び少額リースについて、借手側の簡便的な取扱いを定めており、リース開始日に使用権資産及びリース負債を認識せずリース期間にわたって費用処理する、いわゆる賃貸借処理を認めています。
また、新リース基準では、少額リースに該当する場合の基準として、従来の「リース契約1件あたり300万円以下」という基準に加え、IFRS第16号の取扱いを踏まえ「新品時の原資産の価値が少額であるリース(5千米ドル程度以下)」という基準が選択可能となっています。
貸手の会計処理について、新リース基準では、IFRS第16号及びTopic842ともに抜本的な改正が行われていないため、基本的に旧リース基準における取扱いを踏襲しています。
ただし、収益認識会計基準との整合性を図る観点より、貸手のファイナンス・リースにおいて「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」が廃止されています。
新リース基準では、リースの識別に関する定めが新たに設けられています。
これにより、貸手と借手の双方において、旧リース基準においては会計処理されていなかった契約にリースが含まれると判断される場合があると考えられます。
具体的な定めは、以下の通りです。
我が国では、建設工事請負契約と一括借上契約が同時に締結される取引などにおいて、収益が一定の期間にわたり認識される場合、セール・アンド・リースバック取引の定めが適用されるか否かが論点になることが考えられます。
この点について、IFRS第16号においては、セール・アンド・リースバック取引の定めが適用される範囲、特に収益が一定期間にわたり認識される場合であってもセール・アンド・リースバック取引の定めが適用されるのか否かについて明確にされていません。
新リース基準では、セール・アンド・リースバック取引に該当するか否かを検討する対象となる資産の譲渡とリースバックにおいて、売手である借手による資産の譲渡が次の1又は2のいずれかである取引については、セール・アンド・リースバック取引として取り扱わないこととしています。
これは、資産の譲渡により売手である借手から買手である貸手に支配が移転されるのは仕掛中の資産であり、移転された部分だけでは資産の使用から生じる経済的利益を享受できる状態にないのに対して、リースバックにより売手である借手が支配を獲得する使用権資産は、完成した資産に関するものであることから、譲渡された資産とリースされた資産は同一ではないと考えられるためとされています。
新リース基準では、「サブリース取引」について、原資産が借手から第三者にさらにリース(以下、「サブリース」)され、当初の貸手と借手との間のリースが依然として有効である取引と定義し、当初の貸手と借手との間のリースを「ヘッドリース」、 ヘッドリースにおける借手を「中間的な貸手」と定義し、IFRS第16号と同様にヘッドリースとサブリースを2つの別個の契約として借手と貸手の両方の会計処理を行うこととしています。
IFRS第16号においては、サブリース取引の会計処理に対する例外は設けられていませんが、新リース基準では、サブリース取引の例外的な定めとして、中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の取扱いと転リース取引の取扱いを定めています。
新リース基準では、リースに関する注記における開示目的を、借手又は貸手が注記において、財務諸表本表で提供される情報と併せて、リースが借手又は貸手の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに与える影響を財務諸表利用者が評価するための基礎を与える情報を開示することと定めています。
また、開示目的を達成するためのリースに関する注記として、次の事項を示していま
ただし、上記の各注記事項のうち、開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる注記事項については、記載しないことを認めることとしています。なお、会計基準等に掲げる注記事項以外であっても、開示目的を達成するために必要な情報は、リース特有の取引に関する情報として注記する必要があります。
なお、連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表においては、特定の項目について注記の省略や連結財務諸表注記を参照することを認めています。
新リース基準等は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用するとされています。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することも可能とされています。
適用時期の検討にあたっては、これまでとは異なる実務を求めることに対する実務上の負担を考慮し、会計基準の公表から原則的な適用時期までの期間を2年半程度と長期に定め、早期適用も認めることとしています。
新リース基準の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用します。
ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することも可能です。
詳細は、以下をご参照ください。
■企業会計基準委員会(ASBJ)
https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards/y2024/2024-0913.html [1]
■日本公認会計士協会
https://jicpa.or.jp/specialized_field/20240913kjq.html [2]
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